思いつきの小説 吾輩は亀である 4話
吾輩は亀である。今日は雨が降っている。
激しい雨のせいで、ずぶ濡れになったご主人が家に帰ってきた。
こんな日は機嫌が悪いから、4度目の脱走を決行するべきかもしれぬと逡巡していると、ぬうっとご主人の顔が目の前にあった。
サバ缶も目を細めて、神妙な面持ちでこちらの様子を伺っている。
するとだしぬけに、ご主人が吾輩を台所に運び、水道で丁寧に洗い始めた。
もはやこれまで、鍋料理にされるのは間違いない。サバ缶よ先立つ不孝を許してくれ、
と覚悟を決めているところで、ご主人は吾輩をタオルで丁寧にふき始めた。
どうやら、ただ体を洗ってくれただけのようであった。
サバ缶は、なんだつまらぬという顔で隣りの部屋に歩いて行く。
ともあれ吾輩は今日も何とか生き延びたようである。