思いつきの小説 吾輩は亀である 1話
吾輩は亀である。名前はまだない。
年は齢100歳である。
今のご主人は人格破綻者であるから、三度の脱走を試みたがそのたびに捕まり、
そのうち鍋にでも入れられるのではないかとヒヤヒヤしながら暮らしているのである。
ご主人の家に来たのは半年前で、それ以前はこやつの親戚の家で飼われていて、
名前は諭吉と呼ばれていた。
なんでも夏祭りの縁日の出し物で亀釣りというのをやっておって、吾輩の甲羅に一万円札がくくりつけられていたのが理由であった。
ご主人は吾輩に名前などつけるつもりはないらしく、いつも、おい亀たまには踊りでも踊ってみろなどと話しかけられるばかりで、憂鬱な毎日なのである。